2018年7月18日(水) 12:04 JST

日本人は恩を怖れるのか? 名著「菊と刀」に学ぶ

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思想・社会学

ルース・ベネディクトの名著「菊と刀」。有名な本なのに読んでなかったようだ。AmazonでKindle版がプライムユーザー向け無料だったので購入。

分厚い本だが、やはり凄い。日本人としての自分の心、毎日を暮らす日本社会のありかたと動きが見事に説明されている。これぞ文化人類学の手本。この人、日本に来ることなく病死してしまうのでが、在米日本人への聞き取り等々のフィールド調査で本を書き上げている。まえがき・あとがき等にあるが間違い・ご認識は少々あるものの、第2次世界対戦が終わって数年後の出版、元は米軍の依頼で日本占領政策のために作成された日本人と日本社会に関するレポートだ。70年経っても色褪せない力がある。半端ない。

池内恵 イスラーム世界の論じ方、を読んだ

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思想・社会学

とても息苦しい思いで読み終えた。

感想。今のところ、イスラムと他宗教の共存は根本的に無理。その教義が求めるところが他宗撲滅。そのようにコーランを素直に読むシーア派とスンナ派がイスラム教徒の99%以上を占める。毎日そういう世界でコーランを懸命に読み、アラーの世界の到来を祈っている人が3大宗教で最大の人口を占める。イスラム過激派と呼ばれる人たちはコーランを過激に読んでいるのでなく、素直に読んでおり、ほとんどのイスラム教徒にとって口には出さなくても「あー、コーランの通りに行動していると言えるかも」と受け止められている可能性が高い。モハメッドが自ら武器を取り異教徒を制圧し、改宗を迫り、改宗しなかった人々を殺すか奴隷にした事実が、異教徒への寛容度に大きな影響を与えている。

日本欧米の識者が非イスラム世界との架け橋として期待するイスラム神秘主義はイスラム世界では異端であり、アラーを軽んじていると弾劾されている。「話し合えば、対話すれば分かり合える」という相手ではない。苦悩・・・。

もう、服従しない―イスラムに背いて、私は人生を自分の手に取り戻した、を読んだ

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思想・社会学

イスラムの女性ってこんなに大変なのか・・・・・。
親への従属、部族への従属(これはイスラムというよりは北アフリカの風俗か)、家族と部族の名誉への服従、処女性の絶対視→割礼、結婚相手は親が選ぶ、式当日まで相手の顔も知らない結婚、結婚相手への服従、と死ぬまで我慢が続く。そして我慢を続けることがアッラーに使える道となる。未成年婚・名誉殺人(前述の禁忌を破った場合、名誉を傷つけたとして家族・一族により処刑)・・・。ソマリアに特有のこともあるだろう。トルコのように世俗化されている社会ではこれほどではないだろう。イランのように社会が安定してくると少し緩くなるようだ。

著者はいろいろなことが重なり一人オランダに難民として脱出、西側世界の自由を知り、ソマリア社会で自分を縛っていた鉄鎖を断ち切りイスラムをも捨て去るが、それはやがて、間違いなく互いに大切に思っている両親からも悪魔に魂を売った者として断絶を余儀なくされる。偶然が重なりオランダ社会の多様性のシンボルとして上院議員を務めるが、難民申請の際に自分を守るために名前を一部を省略したことが「偽名で国籍取得し公職に就いている」と非難されオランダ国籍を失い米国で暮らす身となる。

福島第一原発廃炉図鑑 を読んだ

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思想・社会学

開沼博氏、糸井重里氏などが執筆しています。図解・写真が豊富で分かりやすい。福島に現実に暮らしている(いた)人々、働いている人々がそこに存在し、廃炉という避けて通れない事実をしっかりと見据えて、どうやってより住みよい場所にしていくか、という視点に共感する。

開沼博「フクシマ論」原子力ムラはなぜ生まれたのか、を読んだ

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思想・社会学

「あー、社会学ってやっぱり役に立つ学問だ」  が最初の読後感。一応学部で社会学専攻した身としては、社会学が世の中の役に立つことが嬉しい。開沼博さん、原発後にかなり活動している若手社会学者。丁寧な論考に引き込まれた。

明治維新前後から現代まで、知事が政府から任命されていた時期、知事が選挙で選ばれるようになった時期、戦後に市町村議会が福島県内で動くようになり、元々豊かでない中でどうやって地元社会を良くしていくのか悩みに悩んでいた人びと。福島第一原発敷地は、戦後の一時期まで西武の持ち物で、塩田だった。へぇー。

郷土愛がやがて所謂「原子力村」的なものに絡め取られている経緯、これは「中央と地方」のこととして福島に限らず普遍性のある議論。そして、もっとも大切なこと、著者は原子力村的なものを都会から冷ややかに見下す視点ではなく、地元民の一人として、原子力発電所をそこのあるそのままのものとして受け入れ、廃炉が進む環境の中での共生を志向する。とても健全な視点だと思うし、こういう流れをこそ応援していきたい、と思った。

 

東浩紀「一般意思2.0 ルソー・フロイト・グーグル」を読んで議会制度を考えてみた

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思想・社会学

ジャン・ジャック・ルソーの肖像東浩紀の 一般意思2.0 ルソー・フロイト・グーグル を読んだ。内容がある意味謎だったジャン・ジャック・ルソーの「一般意志」は、インターネット時代になってこそ形象化が可能で、それを「一般意志2.0」として取り組むことによって行き詰った議会政治にインパクトを与えられないか、という内容だ。アマゾン書評は賛否両論。

一般意志2.0を議会に持ち込むイメージは次のようなものになる。国会中継をニコニコ動画のフォーマットで行い、視聴者が突っ込みコメントをする、議会参加者はモニター等でこのコメントが読める環境にする。この場合、突っ込みコメントが議事進行を決定的に左右することはないかもしれないが、議会の発言者や参加者はコメントを無視できないので、柔らかな?形での国民の政治参加を可能にする。Twitterでの発言を#国会中継 などのハッシュタグで拾って併せて表示しても良い。

これをやるのなら、web上のストックな意見も併せて議会に表示出来るだろう。言及頻度やリンクを軸に、加えて古いものよりは新しい物をより重視するといったアルゴリズム。この議会ツッコミシステムのコアとなるアルゴリズムはオープンなものとし、常にそのより妥当な姿を求めて上書きが行われる。ポピュリズムとの批判もあるかもしれないが、政治家が国民の評判を無視できない生き物である限り、このディスプレイの現れる国民の意見を無視して国会での議論や運営を行なうのは難しくなるだろう。私は賛成だ。すぐにでもやって欲しい。

東浩紀も本書で紙面を割いて説明しているが、ルソーによる一般意志とは概ね次のようなことである。以下はwikipedia「一般意志」からの引用。

『社会契約論』のなかでも、「一般意志はつねに正しく、つねに公の利益を目ざす」ことを確認する文言から始まる第二篇第三章において、ルソーは、「特殊意志」(各個人の意志)と「全体意志」(特殊意志の総和、全体の総意)という概念とわけて、それらとは別に「一般意志」があるのだと主張している。それはつまり、「特殊意志」の総和である「全体意志」は私の利益をこころがけている点である。「公の利益」とは、「公共の利益」や「全体の利害」とも説明される。また同章おいて、「一般意志」は、単純な「特殊意志」の和ではないが、そのそれぞれの「特殊意志」から、相殺しあう過不足を除けば、「相違の総和」としての「一般意志」が残るのだと説明している。

 

抜書き 2015年安保法制と日本国憲法

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思想・社会学

有料電子マガジン @synodos 2015年12月vol186より。 

@synodos表紙

木村草太×荻上チキ 2015年、日本の立憲主義と民主主義は揺れたのか?

(前略)

木村:今回の安保法制には、憲法9条違反の部分が含まれており、憲法学者の多くが憲法違反を批判しました。その批判に対して、合憲である理由を解釈論として説明した人はいなかったです。代わりに、 憲法を貶めたり、違憲だと指摘した人に人格攻撃したりする議論が多かった。それは、今回の法案を、憲法の文言や理念・体系から合憲性を説明するのが難しかったからでしょう。

そんな中、政権は「違憲だ」という批判を無視する一方で、 「違憲だけどやる必要がある」と開き直ることもできず、大きな欺瞞、ごまかしをし続けた一年だったでしょう。

荻上:感情論と「なんちゃって手続き論」が目立ちましたね。たとえば、「海外で母子が危険な目にあっているのに、出ていかなくていいのか!」と情緒に訴える議論があった。それと、今までも解釈改憲を繰り返してきたのだからという「なんちゃって手続き論」があった。

抜き書き-立憲主義とはなんなのかを考える

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思想・社会学

有料電子マガジン @synodos 2015年12月vol186より。 

@synodos表紙

橋本努-憲法改正を視野に入れた立憲主義は、いかなる価値に服すべきか――安保法制案はまだ熟していない

(前略)

「立憲/非立憲」の対立は、しかしよく考えてみると、「立憲主 義(constitutionalism)」とは何かをめぐって、さまざまな見解を含んだ雑駁な対立であることが分かるだろう。立憲主義と呼ばれる立場には、以下のようなものが混在している。

 (1) 議会の手続きを順守すべきとする「手続き的民主主義」(例えば、野党に対して規定の質問時間を確保せよ、という見解)
 (2) 与党は野党との協議を通じて広範なコンセンサスを作るべきであるという「合意型民主主義」
 (3) 国民的な了解のない解釈改憲は違憲であるとする「憲法民主主義」(憲法解釈にかかわる法案は、国民的な議論の興隆と世論調査の結果を重視せよ、という見解) 
(4) 集団的自衛権は憲法9条の正統性を担保している司法判断 (とその背後にある法律家共同体のコンセンサス)によって正当化されないとみなす「司法的立憲主義」 
(5) 集団的自衛権のみならず、自衛隊の存在すらも、憲法9条に照らして違憲であるとみなす「原理的な立憲主義=不戦主義」(憲法の文 言を厳密に解釈して、「にせ解釈」を排する立場)
(6)自衛隊にせよ集団的自衛権にせよ、解釈改憲によってではなく、現行の憲法の文言を改正することで正統化されなければならないとする「民主的な憲法制定権力の行使による立憲主義」。( そのためには憲法の第96条に即して改正しなければならないという見解)

 

小泉尊聖「平和を目指す君に ネパールとアフガニスタンで考えた抑止力と平和構築」

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思想・社会学

NATO機関初めての日本人としてアフガニスタンに駐在した筆者が、自らの目で見、感じた現場の視点から、中東の安全保障と日本の安全保障政策にまでコメントしている良書です。著者が無名、出版社も無名であまり売れてないようで残念です。2012年の著書ですが、日本政府が集団的自衛権を一部容認し始める2014年、安保関連法案が議決される2015年の日本の政治への警鐘になっているとも言えます。

「戦争をしない軍隊である自衛隊」だからこそアフガニスタンで信頼されている事実。現在進行中の紛争においては軍事力よりも破壊された地域住民の生活を立て直す支援こそが紛争解決に有効であると言われていること。筆者の友人であるアフガニスタン人が戦争に翻弄されてきた人生を振り返り、戦争に翻弄されてきたからこそ、対立勢力への憎悪でなく対話と友好を強く訴える姿などは、涙無くして読めません。そして著者は、こうした一般民衆が立ち上がり、平和共存を訴え続け、その勢力を拡大していくことこそが最上の平和構築であると訴えます。

世界平和のために何かしたい、と思っている人に是非読んでいただきたい本です。

H・キッシンジャー著「外交」

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 前記事のベーカー元国務長官著「シャトル外交」のあとがきに「外交を志すものの必読書2つ」として同署に並んで紹介されていたのがこの本でした。ボリュームがすごくて読むのに2ヶ月かかりました。かばんに入れて持ち歩きながら読みましたが、かばんがいつもより重い状態が2ヶ月続いたので腕が腱鞘炎になりかけました。でも苦労して読む価値のある本でした。

この本は17世紀フランスのリシュリューの外交から説き起こされます。彼を国益を目的に外交を始めた人と捉えています。